ぶらり訪問記 No.025
訪問先:当仁太鼓

今回は福岡市中央区唐人町を拠点として幅広く活動をしている当仁太鼓を訪問した。
このチームの創立は、なんと1988年(昭和63年)、今年で創立37年目を迎える私設の和太鼓チームとしては非常に長い歴史のあるチームであり、福岡での創作和太鼓の先駆者的存在のチームでもある。
現在、団員は41名、若い方は中学1年生から(以前は小学生の方も在籍)、年配の方では70歳代というなんと年齢層の広いことかに驚かされてしまった。

練習会場は福岡市中央区唐人町にある当仁小学校の体育館にて毎週日曜日の12時から15時まで行われている。
当仁小学校は、明治時代に開校された福岡市中央区にある公立小学校で、明治6年に当仁尋常小学校として開校され、当仁という名前は、論語の一説「當仁不譲於師」に由来し、仁に当たりては師にも譲らずと読み「仁を行うには先生に遠慮はいらない」という意味である。また、当仁は唐人に通じることから、つけられたとも聞き及んでいる。
当仁太鼓は昭和63年に結成されて以来、今まで37年間、年齢差を超えて一緒に太鼓を打つという姿勢は結成当時から全く変わっていないとのこと。
地域の祭りやイベント、施設訪問、学校のイベント等に参加し、地域の活性化と青少年の育成活動を積極的に行い、子供たちからお年寄りまでの幅広い人々と交流を行っており、まさに地域を愛し、地域に根付き、地域に貢献する太鼓グループである。
また,創作昔話と笛の演奏を組み合わせた「奏座(かなでざ)」という当仁太鼓内のグループを創り、和の響きを大切に奏でながらいろいろな活動していますとのこと。是非一度聴いてみたいものである。
私が練習会場に着くと、すでに太鼓の搬入の準備が始まっていた。私と顔を合わせたメンバーの方々は、どこのだれだか、かわからない私に大きな声で挨拶をしてくれ、こちらのほうが戸惑いつつも、とても爽やかな気分にしてくれた。
練習会場は小学校の体育館ではあるが、ここの体育館はなんと2階に造られており、小学校のすぐ近くの太鼓保管倉庫より毎回の太鼓の搬入・搬出を行っているとのこと。毎回の搬入・搬出においては結構苦労をされているようである。しかし準備体操と思えば大したことではないのかもしれないが、高齢の私にとってはちょっと辛い(笑)
また太鼓の搬入を見ていると、その充実した機材の種類や数に驚かされた。大平太鼓、桶胴太鼓、そしてたくさんの長胴太鼓、締太鼓、とにかくほとんどの和太鼓が揃っている。うらやましい機材である。
会場使用時間になる前までに使用楽器を準備し、入り口近くで待機。そして今度は待機中の廊下で締め太鼓の皮のチューニングが始まった。練習が終わったら毎回、皮を緩めて保管、使う前に毎回、皮を張って音を確認するとのこと。打楽器奏者としてはごく当たり前のことであり、とても重要なことではあるが、果たしてここまで行っているチームがどのくらいあるのだろうか?
この光景を見るだけでこのチームの太鼓に対する情熱や姿勢がひしひしと感じられた。
会場の使用時間が来ると一斉に楽器の配置を行い演奏体系を整え準備完了。
しかしまだ太鼓のカバーを取ってない、なぜ?これは後で解決することとなる。
現在、指導においては、打ち頭の村山雅人氏、そして奥様の直子氏、さらにご子息のご兄弟を中心に行われており、なんとも頼もしい限りの指導体制である。
開始時間になると、まずは黙想から始まり精神の統一が行われた。
そして今日のスケジュールの説明やカリキュラムの伝達を終えたあと柔軟体操が念入りに始まった。~まずは体をほぐしてから~とても大事なことである。
柔軟体操が終わるとすぐに基本打ちが始まった。


なんと布のカバーを付けたまま太鼓を叩き出したではないか。ということはこの会場は都心にあり周りは住宅街、やはり音の問題からであろう。
致し方ないことではあるが、いつも練習の時はカバーの上からの練習になるとのこと。どのチームにもいろいろな苦労があるものだとつくづく感じた。
しかしこの太鼓カバーの上から叩くと、これまた、とても良い響として耳に伝わってきた。たまたまの偶然の産物だったのかどうかは別として、こういう手法は打楽器奏法として以前から存在している。
ドラムの打面にテープを張ったり布を当てたり、中にはドラムの中に毛布などを入れたりして、音色をコントロールし特定のサウンドを表現するテクニックである。

このような工夫を行うことによりアタックを強調し、短いサスティーンのサウンド「ドッ」という音を得る際にとても有効な効果がある。
倍音や余韻の量を抑制することにより、和太鼓の音の低音部分を強調し、武士集団や戦闘集団が整然と隊列を組み行列を行っているようなイメージなどを表現したい時などには非常に効果的なミュート奏法である。
またこのような効果はバチの種類を変えたり、また叩き方により効果を表現することも可能ではある。
後で演奏してくれた楽曲の一つ「黒田二十五騎」の武者行列のフレーズの部分で、このショートサスティーンミュート奏法が最高の雰囲気を醸し出してくれて最高の演出と音に感じられた。
音の問題以外でも、このチームの抱える問題点はメンバーの年齢差がかなり大きいこともあり、また経験豊かな方とまだ経験が少ない方達との技量の差もかなりの開きがあるが、そんなこと、なんのその、その差の穴埋めはしっかりと先輩たちが指導している。これだけの大所帯でありながら、また年齢層がとても広いにもかかわらず一つにまとまっている。すごいチームワークと組織力である。
和太鼓チームには、いろいろな考え方を持つチームがたくさんある。難しいリズムを叩いてテクニックレベルを上げていくことも、とても大事なことだとは思うが、そのチームの年齢層や力量に合わせて、無理な背伸びはせず、簡単なリズムでも「本来リズムが持つ基本を」をしっかりと理解し、アクセントの位置などリズムの持つ自然体を知れば生きたリズムを打つことができるようになり、とてもいい演奏ができるようになる。
~木谷の独り言~
このチームの練習内容を3時間ほど見学させて頂いて感じたことを少しまとめてみると
- とても優れた組織力とチームワーク、そして確固たる指導陣の体制がある素晴らしいチームであり、だからこそ大所帯の団員数と37年という長きにわたっての活動を続けることができた大きな理由だということを確信できた。
- もう一つ特に感じたことはテクニックや技術面重視より和太鼓という日本に長くから伝わる伝統の文化を通じて、人間としてどうあるべきか、また日本人としてどう生きていくべきかという精神面の育成を中心とした指針を太鼓道の教えをもって行っている部分がこのチームの一番の目的とすることであり、また誇れる部分なのかもしれないと大きく感じさせられた。
このチームのメンバーは今からも、これから先もずっとこの当仁太鼓で培ってきたチームワークを大切にしながら音楽レベルの向上だけではなく人間としての心の豊かさをも身に着ける良き社会人として、そして地域のリーダーとして育っていくに違いない。
このチームの今後ますますの発展と活躍を心より期待したい。
<チームデータ>
創立:1988年
拠点:福岡市中央区唐人町
分類:創作和太鼓チーム
団員数:現在41名
打ち頭・指導者:村山雅人
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【定休日:毎週月曜日・火曜日】