ぶらり訪問記 No.031
訪問先:和太鼓TAWOO福岡

今回のぶらり訪問記は、福岡市を拠点として昨年誕生したばかりの創作系和太鼓チーム「和太鼓TAWOO福岡」を訪問した。
このチームは、昨年2024年に結成されたばかりで、今年で2年目を迎える新生のチームであるが、このチームの代表である佐藤葉子氏は東京在住時に20数年の長きにわたり太鼓を打ってきたベテランであり、仕事を引退した後、福岡に戻ってきて東京在住時に培ってきた和太鼓を福岡でも広めていきたいという強い願いをもって新しくサークルとしてのチーム結成に至ったものである。
佐藤葉子氏が東京在住時に和太鼓を学んだチームはプロの和太鼓バンド「GOCOO(ゴクウ)」がプロデュースする東京ベースの太鼓道場「和太鼓TAWOO(タヲ)」で20数年にわたり太鼓を打ち続けてきた。しかし、都合により帰福しなければならず今まで培ってきたタヲの太鼓をどうしても福岡でも打ちたい、タヲのサウンドを福岡でも広めたいという一心でまずはサークルとして発足、スタートした。


現在サークルのメンバーは6名、基本的には毎週日曜日の10時より13時まで、ヒビカス天神の練習スタジオで練習を行っている。予約制の練習スタジオなので多少曜日や時間帯が変わる場合もあるとのこと。
練習開始時間の10時になると早速練習が始まった。メンバーは6名であるが、とりあえず演奏ができるメンバーは現在3名、後の3名はまだ入会したばかりの初心者なので現在、日々練習に励んでいるとのこと。
今日の練習内容は明日予定に入っている敬老会のイベント演奏のための曲を中心とした通し練習だった。スタイルは3名とも低音パートのアフリカン打楽器のような太鼓と高音パートの締太鼓を組んだ組太鼓スタイルであった。
私は東京方面の和太鼓チームに関しては、ほとんど見識がないため、まず最初にプロの和太鼓バンド「GOCOO(ゴクウ)」のことを調べてみた。
GOCOO-ゴクウ-は、1997年に結成された革新的和太鼓バンド。
太鼓の原点は、ダンスミュージックであり、トランスミュージックである。
天と地と神と人と、すべてと繋がって、愛と感謝に満たされる祭りの衝動。
伝統を越えて、そこへ繋がろうとするGOCOOのグルーヴ感溢れる演奏と、独特なサウンドは和太鼓の常識を大きく越え、新たな潮流を生み出し、和太鼓をグローバルミュージックの域へと進化させている。
日本における初の大規模野外フェス「Rainbow2000」でのデビュー以降国内外で幅広く活動。1997年、伝説のテクノフェスRAINBOW2000でデビュー。バンド結成から26年間 変わらぬメンバーでともに時を重ねる中生み育ててきた唯一無二のグルーヴと音楽性は伝統の枠を超え 原始の祭りへと繋がりトランス、ダンス、ルーツミュージックといった和太皷の根源的かつ新たな境地を開いてきた・・・と紹介されている。
調べれば調べるほど和太鼓には似つかわしくない言葉ばかりが出てくる。
代表である佐藤葉子氏はその和太鼓バンド「GOCOO(ゴクウ)」が併設している太鼓教室、和太鼓TAWOOと称した和太鼓教室で20数年学んでこられたとのこと。
次に東京の和太鼓TAWOOを調べてみた。
タヲTAWOOは太鼓というひとつの道で出逢ったもの達が、共にその道を追求し、太鼓を打つことを通して、ひとりひとりが生きる場を開きたいと1997年1月に創設。太鼓という道、そしてひとりひとりの生きてきた道がそこで出逢い、広がって、また新しい道が開けていくように…
TAWOOという名前は、『道』という意味の『タヲ』から名づけられたとのこと。
タヲのスタイルについて、代表の淺野香氏は「いわゆる伝統的な和太鼓とはちょっと違い、伝統的なスタイルが形作られる以前の、もっともっとプリミティブな、太鼓の原点につながる、打ち手の本能的な感性から、自然と生みだされてきた独自のスタイルが特徴です」と紹介していた。
~木谷の独り言~
このチームの練習内容を3時間ほど見学させて頂いて感じたことをまとめてみた。

①まずは使用している太鼓である。和太鼓に交じって一見してアフリカン打楽器だとすぐにわかるような太鼓が2種類使われていた。アフリカの太鼓のドゥンドゥンやケンケニによく似た形をした太鼓で、和太鼓でいえば桶胴太鼓に原理的にはよく似たもので、もう一つの太鼓は形が少し違うがやはりアフリカの太鼓のジャンベやタムタムを模したような片面太鼓であった。その2種類の太鼓と締太鼓を組んだ組太鼓スタイルのセッティングである。
②もう一つの特徴は音。独特の雰囲気を持った特徴のあるサウンドでアフリカ大陸を感じさせるような太鼓の響きに聞こえてくる。
和太鼓チームといってよいのか、どちらかというと和太鼓とアフリカ大陸の音が交差したような独特のサウンドである。
もちろん使用されている太鼓が違うので音も当然違ってくる。その太鼓の皮は日本の和太鼓みたいにビンビンに張っていない。手で押さえるとボヨンボヨン的なとても緩い張り方である。
和太鼓でもよく見かける皮が伸び切ってしまって音に和太鼓の響がないような、いわゆるミュートをかけて叩いてるような音である。このような音については、6回前に訪問した「025の当仁太鼓」訪問の時にも少し触れさせて頂いた。
一般的に張りの緩い太鼓は音の性質としては音が低くなり低倍音が多く出て深い音に感じられる。構造と特徴としては打面(皮)のテンションが低く、振動しやすいため、太鼓全体に音が響きやすい状態になる。
このような音の役割としては演奏の基盤となる重低音を出し、ゆったりとしたメロディーを奏でたり、また全体を支えて調和させる役目を持つ土台になる音を醸し出す。
一方張りの強い太鼓の音の性質は音が高いため甲高い、硬い音になり打面の振動が細かく高く保たれシャープな音を出すのが特徴である。
適した役割としてはリズムのアクセントとなる「下拍子」として使われたり、単独でメロディックな演奏をしたりするなど、目立つ役割のフレーズなどによく用いられる。

③三つ目の特徴はやはりリズムにある。和太鼓バンド「GOCOO(ゴクウ)」のプロフィールにはダンスミュージックやトランスミュージック、ハウスミュージックが根源にあると書かれていた。
トランスミュージックとは、1990年代初頭にヨーロッパで誕生したエレクトロニックダンスミュージック(EDM)の一種で、ハウスミュージックから派生したBPM125~150程度のテンポに、短いシンセサイザーの旋律を繰り返し、うねるようなサウンドが特徴で、リスナーを「トランス状態」に導くことを目的とした音楽であると紹介されている。
4つ打ちのリズムで1小節に4回バスドラムが鳴るリズミカルで踊りやすいビート。倍音や余韻の量を皮のゆるみやシングルヘッドで抑制することによりアタックを強調し、短いサスティーンのサウンド「ドッ ドッ ドッ ドッ」という基盤となる重低音を得るとても有効な効果がある。(ぶらり訪問記参照025当仁太鼓)
このビートと言えばおそらく中高年の方にはディスコのリズムと感じるであろう。ディスコも同じハウスミュージック、トランスミュージックである。
私もシンセオーケストラを結成していたので多少のことは理解できるがこのような分野はあまり得意な分野ではないので、興味のある方は是非もっと詳しく調べて見られてはと思います。
きっと打楽器奏者には役に立つ要素が結構見つかるのではと思います。
この分野のミュージックは今まで打楽器をやってきた私にも相通じるものが何点かあるのでまとめてみました。
*太鼓のようなリズム楽器だけで音楽を表現するポイントは強弱と楽器の音色である高低で表現するしかない。
ご存じのように音楽の3要素はリズム、メロディー、ハーモニーで成り立っているが音の3要素は音の強さ、高さ、そして音色で構成されている。
この音の3要素は意外と軽視されがちであるため、いろいろな和太鼓チームがけっこう苦労している落とし穴はその辺にあるのかもしれない。
太鼓の持つサウンドを見過ごしてしまったり、またこの楽曲にはこんなサウンドが欲しいのにと思っていても、なかなか方法がわからない等の経験をされておられるチームも多いと思うが、まずその太鼓の特徴を知って皮の張り具合での音の変化を色々と試してみるのもかなりの表現力アップの効果が実現できる。
また叩くバチの種類や叩き方によっても太鼓の鳴りや音色に大きな変化をもたらしてくれる。もう一度別の角度から見つめなおして太鼓の音色にも目を向けてみるのも一つの解決方法につながるかもしれない。
*どうしてもレベルを上げようとして難しい複雑なリズムに走ってしまうチームも結構見受けられるが、しかし今回の訪問で一番重要視したいことは人間の本能に語り掛けるリズム、心を打つリズム、心に残るリズムは決して複雑なリズムではない。
単純なビートのリズムを何度も繰り返して演奏をすることにより能に刺激を与え自然に体を動かしながら心に残る、それがトランス状態に陥る手法でもある。
単純なリズムでも、いや単純なリズムこそ音楽を通してリスナーに陶酔感や多幸感を与え、幻覚や催眠状態に似た「トランス状態」へ導いてしまう、この手法は宗教音楽にも多く取り入れられている。
難しいリズムを叩いてテクニックレベルを上げていくことも、大事なことだとは思うが、そのチームの年齢層や力量、目的に合わせて、無理な背伸びはせず、簡単なリズムでも「本来リズムが持つ基本を」をしっかりと理解し、アクセントの位置など、リズムの持つ自然体を知れば、しっかりとした生きたリズムを打つことができるようになり、観客の心を打つようなとてもいい演奏が必ずできるようになる。このことを、もう一度頭の隅に入れて見つめなおすことも大事なことなのかもしれない。
現在和太鼓チームは民舞系の和太鼓チームと創作系の和太鼓チームに大きく分かれている。このチームは当然創作系の和太鼓チームに分類されるが、更にグローバルな要素を感じさせるユニークなチームであると期待感を持っている。このようなユニークな和太鼓チームも今の時代には必要不可欠なチームなのかもしれない。
しかしちょっと心配なことがある。来る10月13日に開催される弊社主催の第21回太鼓ピクニック野外フェスタに3名で出場するが諸事情でアフリカン太鼓を持参できないので準備された長胴太鼓で代用して叩くとのこと。どの程度のサウンドが表現できるか疑問であるが、いずれにしても創作系の和太鼓チームなのでいい演奏を聞かせてくれるに違いないと期待している。
このユニークな和太鼓チームの今後のさらなる活躍とチームの存続を心より祈りたい。
ぶらり訪問記筆者:木谷慶一
<チームデータ>
和太鼓TAWOO福岡
創立:2024年
拠点:福岡市
分類:創作系和太鼓チーム
団員数:現在6名
代表:佐藤葉子
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水~日:10:00-18:00
【定休日:毎週月曜日・火曜日】