ぶらり訪問記 No.033
訪問先:小城太鼓

今回は佐賀県小城市を拠点として幅広く活動をしている小城太鼓を訪問した。
小城町は、江戸時代に小城鍋島藩の城下町として栄え、「小京都」とも呼ばれる歴史と文化が色濃く残る美しい街であり、また、長崎街道の宿場町として栄えた牛津町や、砂糖文化が根付いた「シュガーロード」沿線に位置することから、小城羊羹など美味しい菓子の文化も有名である。
最近はもう一つ有名になってきたものがある。「にじゅうまる」というブランドのみかんが新しく開発され、私も一度試食したことがあるが本当においしくて最高のミカンでした。このような伝統と風土に恵まれた小城の地で、37年もの長きにわたり活動を続けてきた太鼓チーム、小城太鼓の練習場を訪問させていただいた。
このチームの創立は、1988年(昭和63年)、今年で創立37年目を迎えており、私設の和太鼓チームとしては非常に長い歴史のあるチームである。初代の代表からそして二代目の代表松本一弘氏、更に現在の代表である香田将宏氏が3代目とのこと、長きにわたり基盤を作って来られた初代及び2代目の代表にも心から敬意を表したい。
今日は2代目の松本氏にお会いできるのではと楽しみにしていたが残念ながらお会いできず、次回は是非お会いしたいものである。

練習会場は、地域活動の拠点である「ゆめぷらっと小城」の多目的ホールにて毎週火曜と木曜日の19時から21時半まで行われている。非常に設備の整った素晴らしい会場である。この練習会場には、太鼓の保管場所もあり、すぐに機材の出し入れができるため、練習時の太鼓の搬入・搬出はとても楽である。
組織のユニットは大きく分けて小学生を中心とした小天狗チーム(基本コース)、中高生や大人の方を中心とした成人チームに分かれており、レベルが上がっても長く続けられる体制が整っている。
また代表の香田将宏氏と江島康平氏の2名体制で布陣を敷き万全の態勢で指導・運営に当たっている。
メンバーは現在22名。地域の祭りやイベント、施設訪問、学校のイベント等に参加し、地域の活性化と青少年の育成活動を積極的に行い、子供たちからお年寄りまでの幅広い人々と交流を行っており、まさに地域を愛し、地域に根付き、地域に貢献する太鼓グループである。
19:00〜:未来を担う「小天狗チーム」の熱心な基礎稽古
定刻の19:00、まず始まったのは小学生を中心とした「小天狗チーム」の練習。若いエネルギーが満ち溢れる中、柔軟体操からスタート。

そして、練習時間の大部分を占めていたのが基礎打ちである。ただ単に打つのではなく、特に時間をかけて指導されていたのは、音の強弱、すなわち音楽でいうPP(ピアニッシモ)からff(フォルティッシモ)までの表現と、中に休符を上手に組み合わせた基礎練習であった。
子供たちの真剣な眼差しから、ただ音を出すだけでなく、「音楽として太鼓を表現する」ことの難しさを学んでいることがひしひしと伝わってきた。この年代から、これほど深く音楽的なアプローチで基礎を固めることは、将来の演奏の幅を大きく広げるに違いない。明るく、伸び伸びとした雰囲気の中で、小城太鼓の未来を担うメンバーが力強く育っている様子は、非常に頼もしく感じられた。


20:30〜:成人チームの確かなグルーヴと、更なる高みへの課題
小天狗チームの練習が終わり、続いて20:30からは中学・高校生以上が参加する成人チームの練習がスタート。こちらも入念な基礎打ちを15分ほど行っていた。

成人チームの演奏から感じられた最大の魅力は、各パートの音のバランスが非常によく取れていること。全体として一つの大きなグルーヴを生み出しており、長年の活動で培われたチームワークと一体感が、音となって現れており、また、バチの握り方も自然で良いフォームをされている方が多く、力の伝わり方もスムーズであった。
~木谷の独り言~
一方で、更なる高みを目指す上で、いくつか気づいた点もありました。
一つは、使用されているバチがやや細く硬いためか、音に深みや重厚感が出にくい印象がありました。もう少し太いバチや、少し軽いが、やや粘り気のある素材である朴材などのバチを使うことで、太鼓の持つ本来の鳴りと迫力そして音色を最大限に引き出せる可能性があります。
もう一つは、笛方(笛担当)の演奏です。曲のフレーズ全体を通して抑揚がなく、音楽が一本調子に聞こえてしまう部分がありました。また、ブレスの取り方にも改善の余地があり、これによって音楽の流れが途切れてしまうことも。太鼓のリズムに、笛のメロディーラインがしっかりと乗っかって自由に歌い、楽曲に豊かな彩りを与えることができれば、チーム全体の表現力が飛躍的に向上するでしょう。
最後に、強弱表現の基本打ちでも見られたpp(ピアニッシモ)の音の出し方です。「小さい音」イコール「張りのない小さな音」ではなく、「しっかりと芯のある、しかし小さい音」を追求することで、繊細さの中にも力強さのある表現が可能になります。
次なる一歩へ!小城太鼓さんの活躍に期待
チーム創立37年という重みを感じさせる、確かな技術とチームの結束力を感じた小城太鼓さんの訪問でした。地域に根ざした活動を続け、幅広い世代に和太鼓の魅力を伝え続けている小城太鼓。
今回感じた課題は、全て「もっと良くなれる」というポジティブな可能性に他なりません。
特に音の表現力やバチの選定を工夫することで、小城の地で受け継がれてきた伝統芸能を、さらにスケールアップさせて未来へ繋いでいけると確信しています。
小城太鼓さんの今後のさらなる活躍を、西日本楽器は心から応援しています!
ぶらり訪問記筆者:木谷慶一
<チームデータ>
佐賀 小城太鼓
創立:1988年(昭和63年)
拠点:佐賀県小城市小城町
分類:創作和太鼓チーム
団員数:現在22名
代表:香田将宏
