ぶらり訪問記 No.034
訪問先:萩尾太鼓
篠栗小学校萩尾(ハギノオ)分校

西日本楽器 和太鼓事業部の木谷慶一です。今回は、福岡県糟屋郡篠栗町、霊峰・若杉山の西麓にある篠栗小学校萩尾分校を訪問し、和太鼓を授業に取り入れられているチーム「萩尾太鼓」の皆さんの音楽の授業に一緒に入らせていただきました。

豊かな自然とロマンに抱かれた分校の伝統
まず、萩尾分校のある篠栗町萩尾地区についてご紹介しましょう。篠栗町は、お遍路の地として知られ、山々には古くからの信仰や歴史が息づいています。この萩尾地区は、特に若杉山の豊かな自然に抱かれた風光明媚な環境にあります。若杉山は、かつて神功皇后にまつわる伝説から「綾杉」が生い茂り、「分杉山」と呼ばれていたのが転じたとされ、その清々しい空気と歴史が、この土地に特別な「気」をもたらしているように感じられます。私が小学6年生の時に初めて登山らしきものをした最初の山登りがこの若杉山でした。思い出の山です。
そんな素晴らしい自然の中に佇む萩尾分校の校舎は、まるで絵本から飛び出してきたようなとんがり帽子の時計台が特徴的で、思わず「ロマン」を感じてしまう可愛らしい佇まいです。そして「分校」という響きを聞くと、どうしてか映画『二十四の瞳』を思い出してしまい、温かく、またどこか郷愁を誘うような、そんな特別な学校の雰囲気を醸し出していました。

この萩尾分校では、和太鼓が授業の中で取り入れられており、またこれが大変珍しく、その活動は、平成7年(1995年)に「萩尾竹ばやし」で始まったと言われています。ちなみに、この萩尾分校の創立は1874年明治7年創立で151年の歴史を持っている由緒ある学校です。ちなみに福岡県にある分校はここ1か所だけだそうです。
自主性・創造性溢れる太鼓のリズム
今回訪問させていただいた「萩尾太鼓」のメンバーは、小学1年生から6年生までの10名。全校生徒が10名ですので全員がメンバーです。少人数のチームですが、彼らの和太鼓にかける情熱と創造性には心から感動しました。
何よりも特筆すべきは、専門の指導者がいないにも関わらず、子供たちだけで和太鼓の演奏を完成させているという点です。彼らは自分たちで自主的に考え、工夫を凝らしながら練習を進めています。低学年の子に教えるのは高学年の子の役目という、代々受け継がれてきた指導体制がしっかりと機能しており、太鼓の技術だけでなく、教える力、まとめる力といった人間的な成長にも繋がっていると感じました。


そして驚いたことに、彼らは既存の曲を演奏するだけでなく、生徒たち自身で曲を創作しているのです!これは和太鼓を単なる楽器としてだけでなく、音楽を表現し、創造するツールとして捉えている証拠であり、彼らの豊かな感性と、それを形にする力には脱帽しました。
和太鼓を学校の授業に取り入れ、音楽教育の一環として長年継続していること自体、全国でも稀有な素晴らしい取り組みです。全体として、10名の息はぴったりで、チームとしての全体のバランスが非常によく取れていることは、指導者不在の環境下での最大の成果と言えるでしょう。
成長への期待を込めたアドバイス
自主的な活動の中で、今後さらなる高みを目指すために、授業見学を通して感じたいくつかの課題を、成長への期待を込めてアドバイスさせていただきます。
まず技術的な面では、バチの持ち方を基本に立ち返って確認してみましょう。よりリラックスして正確にバチを握ることで、もっと幅広い音色が出せるようになります。
また、締太鼓の皮の張りがかなり緩いため、本来の音程よりも低く響いてしまっていました。演奏前に皮の張りを調整することで、よりクリアで曲に合った音色が得られ、演奏全体の締まりが良くなります。
演奏表現においては、現在の演奏は強弱があまりなく一本調子になってしまう傾向が見られました。これは、和太鼓演奏において最も大切にしたい表現力の一つです。特に「ピアニッシモ(ごく弱く)」の表現がまだ安定していないため、曲の緩急や情緒を伝える上で、課題となりそうです。
また、フレーズの切れ目や小節の頭をもう少し意識して演奏することで、曲のリズムがさらに明確になり、聴き手に心地よく伝わるでしょう。
演奏体形についても、太鼓同士のセッティングをもう少しコンパクトにすることで、メンバー間のアイコンタクトが取りやすくなり、より一体感のある演奏が可能になりますので異なった太鼓同士の間隔を少し狭めた体形にしてみてください。
未来へ響け!萩尾太鼓の響き
萩尾太鼓の皆さんは、豊かな自然の中で、和太鼓という素晴らしい伝統文化を通じて、自主性、協調性、そして何よりも創造力を育んでいます。今回挙げた課題は、みなさんがさらに音楽的な深みを増し、次のステージへ進むための伸びしろです。
これからも、この風光明媚な萩尾の地で、歴史ある校舎から生まれる皆さんの元気いっぱいの太鼓の音色が、山々を越えて響き渡ることを心から楽しみにしています。
西日本楽器は、萩尾太鼓の活動をこれからもずっと応援しています。
まずは地元の皆さんに素敵な演奏をもっともっと聞かせてあげてください。
みなさん楽しい時間をありがとうございました!またお会いしましょう。


皆さんが育てた生椎茸ありがとうございました。本当においしかったですよ。
ぶらり訪問記筆者:木谷慶一
<チームデータ>
笹栗小学校 萩尾分校
創立:学校の創立1874年(明治7年)、和太鼓の授業への導入1993年
拠点:糟屋郡篠栗町萩尾640-1番地
分類:創作和太鼓チーム
団員数:現在10名
構成:小学1年生~6年生
