ぶらり訪問記 No.037

丘の上に響く伝統と情熱の鼓動 — 「笹丘太鼓」訪問記

西日本楽器 和太鼓事業部の木谷慶一です。

暦の上では春とはいえ、まだまだ冷え込みが厳しい日が続いおりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回の「ぶらり訪問記」は、福岡市中央区の閑静な住宅街に位置する「笹丘」の地を訪ねました。

【伝統を慈しみ、人を育む「笹丘」の風土】

福岡市中央区の南西に位置する笹丘。笹丘という地名は、かつてこの地が美しい笹の生い茂る丘陵地であったことに由来すると言われています。

近隣には県指定無形民俗文化財「田島八幡神社の夜神楽」を継承する田島地区もあり、都市化が進んだ現在でも、自分たちの土地に伝わる芸能や文化を大切に守り抜こうとする気風が強く残っている地域です。

そんな街のシンボルともいえるのが、今回お邪魔した福岡市立笹丘小学校。

「さわやかな挨拶、さりげない親切」を掲げるこの学校は、地域の方々との繋がりを非常に大切にされており、校内からはいつも子どもたちの活気ある声が響き、まさに地域に開かれた「教育の殿堂」と呼ぶにふさわしい素晴らしい環境です。

16:30 夕暮れ時、まだ少し肌寒い体育館に、一人、また一人とメンバーたちが続々と集まってきました。

この「笹丘太鼓」は1993年に結成。代表である白勢博子氏のもと、サブリーダーとして安波美樹氏、更にご父兄の協力を中心とした指導体制で30年以上の長きにわたり笹丘校区の夏祭り、地域のお花見イベント、神社への奉納演奏、博多どんたく港まつり、年度末の校区発表会など数多くの行事をこなし校区の活性化やふれあいに貢献しているまさに地域に根付いた民舞系太鼓グループです。

この笹丘太鼓のモットーは子ども達の心の成長を願い仲間作りを大切にして、「元気で楽しいお祭り太鼓」を目標に頑張っていますとのこと。

現在メンバーは約30名。驚くのはその年齢層の幅広さです。小学1年生から中高校生、そして最高齢はなんと82歳の現役メンバーまで!

親子で参加されている方も多く、世代を超えて一つの目標に向かう姿は、今の時代、非常に稀有で尊い光景に映ります。

—練習前のひと工夫

練習開始前、広い体育館の全てのカーテンが丁寧に閉められていきました。 ここは住宅街の真ん中にある学校。近隣の方々への配慮として、少しでも音漏れを防ぐための対策です。

一枚一枚の重いカーテンを閉める作業は決して楽なものではありませんが、こうした地道な配慮があるからこそ、地域に根ざした活動が長く続いていくのだと改めて実感しました。

17:00 — 冷暖房のない体育館。

近々エアコンが設置される予定とのことですが、今はまだ冬の冷気と夏の熱気をそのまま肌に感じる環境です。

当然私たちの時代はエアコンなんてありませんでした。

17時に練習がスタート。まずは体をほぐしながら、そして代表の注意事項や演奏上での注意点などの伝達があり17時半を過ぎる頃には、本格的な曲の練習へ。

曲の練習に入ると、体育館の空気がビリビリと震え始めました。

白勢代表の鋭い視線や激が飛ぶ中、子どもたちが一生懸命にバチを振るいます。

驚きと感動 — 現代の若者が叩く「日本の原風景」

ここで私は大きな驚きと感動を覚えました。

現代の若者主体のチームは、大半、スピード感とパフォーマンス性溢れる現代リズムを中心とした創作太鼓を好む傾向にありますが、笹丘太鼓は「民舞系(日本の伝統芸能)」が主体のチーム。

お囃子や盆踊りのリズム、そして笛の音色が体育館に響き渡りました。

かつてどこかの夏祭りで耳にしたような、ウキウキする太鼓の拍子と、心を躍らせる笛の旋律、あの懐かしい「日本の音」でした。

それを今の子どもたちが一生懸命に打ち込んでいるではありませんか。

この姿を見て、私自身、完全に童心に帰ってしまいました。

「あぁ、懐かしいな~」という想いと同時に、日本の伝統がこうして次世代へ確実に引き継がれていることに、深い喜びと期待感がこみ上げてきました。

次世代を担う子どもたちが、伝統芸能の「面白さ」を肌で感じ、継承しているその姿こそが、このチームが長く、長く続いていく確かな証であると確信し、頼もしさで胸が熱くなりました。

【30年を支える「情熱」という名のボランティア】

チームを率いるということは、単に技術を教えるだけではありません。

こうした地域への配慮、青少年の育成への情熱、そして何より深いボランティア精神。その積み重ねが、30年という長い歴史を支えているのだと感じました。

チームを30年以上率いていくことが、どれほど大変な労力と苦労を伴うか、それは想像を絶するものがあります。

青少年の健全育成に対する並々ならぬ情熱、そして無償の愛とも言えるボランティア精神がなければ、到底成し遂げられることではありません。

白勢代表及び関係者の皆様、保護者の方々のこれまでの歩みに、心からの敬意を表します。

木谷慶一の「ここを磨けばもっと光る!」

さらなる高みを目指していただくために、いくつか気づいたことをお伝えいたします。

◆「構え」の美学

どんな楽器を演奏するにしても姿勢はとても大事です。太鼓に向かう際の立ち位置や高さなど、姿勢にまだ少しバラつきが見られます。

「太鼓は構えで音が決まる」と言っても過言ではありません。

全員の姿勢が揃えば、見た目の美しさだけでなく、音の厚みも変わってきますし音の粒も揃います。

常に「見られている」という意識を持って構えてみてください。

◆バチの支点と握りの工夫

バチの支点をどこに置くか。握り方にあと少しの工夫を加えることで、無駄な力が抜け、より響きの良い「生きた音」になります。

特に民舞系の太鼓は力任せで太鼓の皮を「叩く」のではなく、太鼓全体を「鳴らす」という意識を持って感覚を掴んでほしいと思います。

◆リズムに「命」を吹き込む

民舞の真髄は「跳ねるリズム」にあります。シンコペーションやアクセントの移動をより鮮明にし、叩いている本人がもっと楽しさを爆発させるようなイメージで打てると、聴衆の心をもっと揺さぶるはずです。

◆全体の音量バランス

長胴、平、締、それぞれの太鼓の役割を意識し、音量のバランスを整えてみてください。お互いの音を「聴く」ことで、一つの大きなアンサンブルが完成します。

◆指揮者の「鼓動」を感じる

締太鼓やチャンチキの地打ちは、チームの心臓(指揮者)です。

そのリズムを耳で聴くだけでなく、動作もしっかり目で追って合わせる練習をしましょう。

そうすればテンポのズレがなくなり、全体のリズム表現がさらに安定してくるでしょう。

終わりに

練習の最後、メンバー全員の清々しい表情が印象的でした。

「笹丘太鼓」という名前が、これからもこの丘の上で、そして福岡の空に響き渡り続けることを願ってやみません。

白勢代表、サブリーダーの方々、保護者の皆様、そしてメンバーの皆様、本日は素晴らしい時間をありがとうございました!

これからも、地域に愛されるその素敵な響きを、ずっとずっと守り続けてください。

西日本楽器 和太鼓事業部は、皆さんの情熱を全力で応援していきます!

筆者:西日本楽器 和太鼓事業部 木谷慶一

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