西日本楽器 和太鼓事業部の木谷慶一です!
太鼓の音に誘われて各地のチームを訪ねる「ぶらり訪問記」。
今回は、歴史とロマンが交差する街、福岡県小郡市へと足を運びました。
ぶらり訪問記 No.038
織姫と彦星の鼓動が響く街「おごおり七夕太鼓 白鷺会」

悠久の時を刻む「七夕の里」小郡を訪ねて
筑紫平野の穏やかな風景が広がる小郡市。ここは江戸時代から続く「坂田の投げ網」による鴨猟の歴史があり、「鴨のまち」として食文化も豊かなところです。
また公的なシンボルとして、1974年に制定された市鳥「シラサギ」は清らかで住みよい街の象徴として、市民に親しまれています 。
そしてなんといっても小郡といえば欠かせないのが「七夕伝説」です。
市内にある「七夕神社(媛社神社)」は、日本でも珍しく織女神(織姫)を祀っており、その歴史は1300年以上に及びます 。
神社のそばを流れる宝満川を天の川に見立て、対岸の老松宮(彦星)と結ぶという、街全体が伝説の舞台となっているロマンチックな土地柄なのです 。

古くから交通の要所として栄え、豊かな自然と歴史が調和するこの街で、その伝説を音に託して活動しているのが、今回ご紹介する「おごおり七夕太鼓」の皆さんです。
街の誇りを名に冠した「おごおり七夕太鼓 白鷺会(はくろかい)」は1996年、当時の小郡市長の「市に勇壮な太鼓の響きを!」という熱い思いに応え、多くの地元企業の支援を受けて誕生しました。今年で結成30周年という記念すべき節目を迎えられ、現在は学生、会社員、主婦、市役所職員、自衛隊員など多種多様なメンバーが集結し日々練習に励み、立場を超えて一つの音を創り上げています。
練習会場は、市民の交流の拠点である小郡市生涯学習センター。
その中にある「七夕ホール」は、非常に整備された綺麗な施設で、響きも素晴らしく、太鼓打ちにはたまらない環境です。
文化振興に力を入れている小郡市の熱量が伝わってくる素晴らしい施設です。
結成30周年、地域に愛される勇壮な響き
私が16時半に練習会場に到着すると、すでに「白鷺会」の文字が入った専用車が!
専用の運搬車があるということは、チームの結束と活動の幅広さを物語っており、実にうらやましい限りです。
ホールに入ると、まずお会いしたのは、広報担当の村上純子さん。
空手の指導者でもある村上さんは、今回の訪問において事前準備の資料作りから訪問当日の行程まで、すべての段取りのお世話を頂き、非常にスムーズに取材することができました。本当にありがとうございました。
その後、代表の成富壽明氏をご紹介いただき、そして演奏リーダーで指導担当の廣瀬久士氏、伊東政智氏、武田清志氏の3氏をご紹介いただきました。
その中のおひとり武田清志氏は笑顔で私に話しかけてくれ、また取材途中でもいろいろと教えて頂きました。
体格のとてもいい大柄な方でしたが笑顔が最高で、まるでドジャースの大谷翔平選手のような存在の方でした。
最後に名刺を頂きましたが陸上自衛隊の防衛技官とのこと、大柄な風格も納得です。その時すぐに私の頭の中に自衛太鼓のことが浮かんできました。
伝説を具現化する、圧巻の「大太鼓」
練習開始前、次々と運びこまれる楽器を見て言葉を失いました。


そこには、今では、なかなか手に入らない3尺の長胴大太鼓「赤巴」、そして度肝を抜く6尺の大桶胴太鼓が・・・。
この「赤巴」は伝説の織姫を、そして6尺の大桶胴太鼓は彦星(牽牛)を表現しているとのこと。
七夕伝説を背負って打つその姿は、まさに小郡の誇りそのものです。
また安全面を考慮し、大太鼓用のパワーリフターまで完備されている徹底ぶりで、機材への愛と安全意識の高さに感服いたしました。
心に響いた「音の対話」
19時10分、練習がスタート。準備体操から始まり、エア素振り、基本打ちへと流れるような構成。無駄のない基礎打ちを経て曲の練習へ。


私が最も感銘を受けたのは、以下の3点です。
①このチームは楽曲の構成や各パートの役割をメンバーたちがしっかりと理解した演奏している。
今、このフレーズは誰が主役なのか、だれが脇役なのか、だれが地打ちの指揮者なのか、しっかりと体で受け止めている。
まるで太鼓同士が会話をしているかのようなアンサンブルは、聴く者の心に情景を浮かび上がらせます。
“今、主旋律は桶胴太鼓が演奏しているので、副旋律の長胴太鼓は少し控えた演奏をしよう”とか “さぁ!このフレーズは我々の出番、しっかり叩くぞ~”
そういった会話が会場から聞こえて来そうな練習風景でした。
②「音」への探究心

高度なリズムのテクニックを追及する事もとても大事ではあるが、このチームは難しいリズムばかりを追い求めているのではなく、太鼓から出る音、太鼓から出したい音をかなり深く追及しようとしていることが感じ取れる。
メロディーを持たない打楽器だけでの演奏も立派な音楽であるからこそ、このチームの演奏は大太鼓一つの音でも一打一打を大切に打っている。


だから聴いている観客にも、その太鼓の響きが語り掛けてくるのである。
ピアノでも、吹奏楽団でも、和太鼓チームでも、またどんな曲でも、私は“一音一音を大切に、最後の音は特に丁寧に大切に”と伝えている。
最後の余韻が消えるまでが演奏である。
このチームはまさにそのことまでも理解している。
余韻が消える最後の瞬間まで神経を研ぎ澄ます姿勢は、まさに音楽の真髄である。
★さらなる高みへ:メンテナンスの視点から
素晴らしいチームだからこそ、あえて今後のさらなる飛躍のために、技術的なアドバイスを2点お伝えさせていただきたい。
バチの材質と音色
和太鼓の音の8割は「胴」で決まり、表現力の8割は「バチ」で決まると言われるほど、材質選びは重要である。
バチ選びの最適化: 太鼓の種類や奏者自身の体格、曲の役割に合わせて、バチの「材質・長さ・太さ」を再考してみてください。
特に女性や小柄な方が大きな太鼓を打つ際、バチのバランスを変えるだけで、驚くほど音がクリアになり、身体への負担も軽減されます。
桶胴太鼓の打点と支点
担ぎ桶と伏せ打ちでは、本来適したバチの長さが異なります。また、打点(真ん中を叩く意識)やバチを持つ支点を見直すことで、楽器が持つ本来の反動力を最大限に活かせるようになります。せっかくの素晴らしい楽器ですので、そのポテンシャルを120%引き出していただきたいと願っています。
結びにこのチームには「市鳥の白鷺のようにしなやかで力強く、七夕の伝統を発信したい」という想いが、奏でる一打一打にしっかりと宿っていました 。
30周年という大きな節目を越え、さらに羽ばたく「おごおり七夕太鼓 白鷺会」。その音色は、きっとこれからも小郡の空に響き渡ることでしょう。
訪問を終えて
30周年という大きな節目に立ち会えたことを光栄に思います。おごおり七夕太鼓の皆さんの演奏は、まさに小郡の歴史と未来を繋ぐ架け橋です。
成富代表、指導リーダー廣瀬久士、伊東政智、武田清志の三氏、広報の村上さん、メンバーの皆様、素敵な時間を共有できたこと本当にありがとうございました。
温かく迎えてくださったチームの皆様に心より感謝申し上げます。
次は、夏のお祭りで夜空に響く「織姫と彦星」の共演を、ぜひこの目で見たいと思います!
筆者:西日本楽器 和太鼓事業部 木谷慶一
追記:楽器への愛情: 練習後、当たり前のように締太鼓のボルトを緩めて保管する姿に拍手を送ります。

楽器を大切にする心があるからこそ、あのような澄んだ音が生まれるのでしょう。
おごおり七夕太鼓 白鷺会
(2026年3月12日訪問)
結成:1996年
拠点:福岡県小郡市
分類:創作和太鼓チーム
団員数:現在22名
代表者:成富壽明
演奏リーダー:廣瀬久士、伊東政智、武田清志
