宿場町の風情に響く、— 獅子が舞い、太鼓がうなる!三世代が絆でつなぐ音 —
「江迎獅子舞太鼓」訪問記

西日本楽器 和太鼓事業部の木谷慶一です。
山々の新緑が目に鮮やかな季節となりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか。 今回の「ぶらり訪問記」は、長崎県佐世保市の北部に位置し、古くから交通の要所として栄えた歴史ある街、江迎(えむかえ)を訪ねました。
【歴史と伝統が息づく「江迎」の風土】
江迎町は、江戸時代に平戸藩主が参勤交代の際に宿泊した「江迎本陣」が置かれた宿場町として知られています。今もなお当時の面影を残す町並みや、約500年の歴史を誇る「江迎千灯籠まつり」、そして春を彩る「肥前えむかえ繭玉まつり」など、一年を通じて伝統を大切にする気風が深く根付いている土地柄です。
そんな歴史情緒あふれる町で、地域の平安と五穀豊穣を願い、獅子舞と太鼓の競演を継承し続けているのが、今回お邪魔した「江迎獅子舞太鼓」の皆さんです。
獅子舞太鼓の由来は昔、東岩崎地区一帯に疫病(コレラ)が流行、死者が続出し不安恐怖が高まり、地域住民の代表が太宰府天満宮に参拝の上厄払いをして頂き、高岩天満宮に分霊奉納した処、病気平癒したと言い伝えられています。 それ以来春季の大祭は勿論、宵祭には太鼓を打ち鳴らし、お祭りをしておりましたことが発端となり昭和六十二年、地域有志一同により、公民館活動による青少年健全育成、地域活性化を願い、新たに獅子舞太鼓を結成し活動を始め現在に至るとのことです。
練習会場は、佐世保市立江迎中学校の「武道館」。


「質実剛健」を校訓に掲げる江迎中学校は、生徒たちが明るく礼儀正しいことで知られ、地域の方々と共に歩む開かれた教育環境が非常に素晴らしい学校です。
この武道館には太鼓の保管場所も設置されており、機材の出し入れがスムーズに行えるとても素晴らしい環境で、周辺での音のトラブルもなく、のびのびと演奏できる理想的な拠点となっています。


【SNSでも話題! 伝統を「魅せる」圧倒的な表現力】
江迎獅子舞太鼓の活動は、公式インスタグラム等でも広く発信されています。そこで拝見できるのは、単なる打奏に留まらない、まさに「郷土芸能」としての完成されたステージです。
特に目を引くのは、二頭の獅子による躍動感あふれる舞。そして、見る者の背筋を正させるような般若の面をつけた迫真の演奏。
面をつけることで、打ち手の感情がより研ぎ澄まされ、伝統的なリズムがドラマチックに昇華される——。こうした「視覚」と「聴覚」を揺さぶる演出が、地域のイベントや新春の演舞で多くの人々を魅了し続けてきた理由なのだと深く納得しました。
【世代を超えて繋がる、日本の原風景】
午後七時を過ぎると、練習会場には続々とメンバーが集まってきました。
代表兼指導者の川尻康行ご夫妻をはじめ、演奏リーダーの方々やご父兄の皆様、そして今回、窓口として大変お世話をいただいた井手ご夫妻。
皆様の温かく、人情味あふれるご対応に、私の心もすっかり癒されました。
現在、チームには4歳児から74歳まで、約30名のメンバーが在籍しておられるそうです。
現代の若者主体のチームはスピード感のある創作太鼓を好む傾向にありますが、江迎獅子舞太鼓の若者たちは、地元に古くから伝わる郷土芸能の曲も学びつつ、また創作系の曲も、少しずつ練習に取り入れているそうです。また、おじいちゃん、おばあちゃん世代も参加、童心に帰ったように夢中で打ち込み、その傍らで一緒に小さな子どもたちが必至でリズムを体で覚えようとしている。年代を超えてのこの光景、まさにこれこそが、今の日本社会から失われつつある「地域の絆」の源であり、伝統文化を次代へ繋ぐための最も大切な原動力なのです。
その光景を目の当たりにし、懐かしさと同時に、将来への確かな期待感で胸が熱くなりました。
【情熱という名のボランティア精神】
これほど多様な世代をまとめ、長きにわたりチームを牽引していくことは、並大抵の労力ではありません。川尻代表をはじめ執行部役員の方々の青少年育成に対する並々ならぬ情熱と、見返りを求めない深いボランティア精神だからこそ、この素晴らしいコミュニティが維持されているのだと痛感しました。
地域の宝を守り抜くその姿勢に、心からの敬意を表します。


木谷慶一の「ここを磨けばもっと光る!」
チームのさらなる飛躍を願い、気が付いたいくつか少し気になる所をアドバイスをさせていただきます。

「構え」と「姿勢」の再確認
どんな楽器でもやはりまず姿勢です。
これだけの年齢差があるチームなので大変だと思いますが、太鼓に向かう際の立ち位置や高さもとても重要なポイントです。何か少し工夫ができると子供たちも、もっと叩きやすくなるのではと感じました。
「バチの支点と握り方の工夫」
バチを握る際、支点を意識して少し工夫を加えるだけで、無駄な力が抜け、太鼓の鳴りが驚くほど変わります。力で叩くのではなく、またバチを置くような叩き方ではなく太鼓を響かせる感覚を掴んでみましょう。
「体格に合ったバチの使い分け」
自分の体格や手の大きさに合ったバチを選び直すことで、よりコントロールしやすくなり、上達のスピードも上がるはずです。
幼稚園生、小学低学年など体格に合わせて太さや長さ、特に材質(重さ)にも注意してみましょう。
「アンサンブルの音量バランス」
長胴太鼓と締太鼓の音量バランスや、音の高低差を意識できるような練習方法を工夫してみてください。お互いの音をより「聴く」ことで、演奏に奥行きとドラマが生まれます。
「練習方法」の再確認
4歳児から大人の方までと、年齢層の幅がとても広いため、メンバーをとりまとめていくのも大変だと思いますし、とてつもないご苦労があると思います。
ここでもう一度原点に戻り練習のやり方などを指導者の方々で根本的に再確認をして見られてはいかがでしょうか?
*楽譜を利用されておられましたが、これもとても良い方法だと思います。
木谷の独り言
4歳から70代までが同じ舞台に立つ——。これほどまでの年齢差を抱えながら、一つの音を作り上げていくチームは本当に素晴らしいことだと思います。
これこそが本来の「地域に根ざした伝統芸能」の真の姿であり、継承の源なのだと改めて強く感じました。日本はまだまだ捨てたもんじゃないですね!
終わりに
練習の最後、会場いっぱいに響き渡る太鼓の音とメンバーの皆さんの笑顔に、私も元気をいただきました。
今回は残念ながら獅子舞の練習を見ることができなかったので、次回は是非見学させていただきたいと思っています。
江迎の歴史とともに歩むその響きが、これからも絶えることなく、この町を明るく照らし続けることを願っております。
川尻代表ご夫妻をはじめ、指導者の皆様、井手様ご夫妻、そしてメンバーの皆様、本日は本当にありがとうございました!
西日本楽器 和太鼓事業部は、これからも皆さんの情熱を全力で応援致します。
……ただ、一つだけ本音を言わせていただけるなら、江迎までの道中、とにかく遠かった!(笑)
でも、あの皆さんの笑顔と響きに出会えるなら、そんな疲れも吹き飛びます。
またお会いできるのを楽しみにしています!(本音ですよ)
・・・帰り着いたのが夜中の1時近くでした(笑)
ぶらり訪問記筆者:西日本楽器 和太鼓事業部 木谷慶一
039 江迎獅子舞太鼓 2026年4月27日訪問
創立:1987年
拠点:長崎県佐世保市江迎
分類:伝統文化系創作和太鼓チーム
団員数:現在約30名
代表:川尻康行
演奏リーダー:向坂亮輔、岩﨑将太、尾坂和樹
