〜伝統を繋ぐ人情の響き!山口市阿知須で老若男女が打つ、未来への鼓動〜
みなさん、こんにちは!西日本楽器の木谷慶一です 。
西日本地区で活動している熱い太鼓チームを訪ねてその魅力をお届けする「ぶらり訪問記」、今回は山口県山口市阿知須へと足を延ばしました 。

阿知須(あじす)といえば、かつて中世から江戸時代にかけて、瀬戸内海の海上交通の要衝・潮待ちの港として栄えた歴史ある土地です 。
穏やかな周防灘に面し、干拓によって築かれた豊かな美田と、どこか懐かしい風情が残るこの町には、今も地域住民の強い絆が息づいています 。
そんな歴史と風土に彩られた阿知須の地で、1993年の創立以来、30年以上にわたり和太鼓の響きを繋ぎ続けているのが、今回ご紹介する「周防千鳥太鼓保存会」の皆さんです 。
「周防千鳥太鼓保存会」は、1993年(平成5年)6月11日、山口市に合併される前の旧・阿知須町で誕生しました。地域のコミュニティ活動を盛り上げようと和太鼓を購入し、「地域のみんなで和太鼓チームを作ろう!」と声が上がったのがすべての始まりだったそうです。地元に住む人、地元で働く人たちが集い、有志によって結成されたというルーツに、あたたかい地元愛と歴史を感じます。

今回の練習会場である「阿知須地域交流センター」へと向かいました 。
こちらは山口市役所阿知須総合支所に併設された素晴らしい複合施設で、地域の人々に広く愛されています 。
中にあるスタジオにお邪魔したのですが、なんとここには太鼓の専用保管場所が完備されているのです 。音の問題やトラブルも一切なく、のびのびと大音量で演奏できる環境が整っています 。

そして私が驚いたのは、その充実した機材の数々です!会場に入ると、出てくるは出てくるは、機材置き場には本当にたくさんの楽器が大切に保管されていました。
長胴太鼓、締太鼓、桶胴太鼓、平胴太鼓はもちろんのこと、なんと2尺3寸もの見事な長胴太鼓まで鎮座しているではありませんか。
とにかくほとんどの種類の和太鼓がズラリと揃っており、機材にはまったく事欠かない、素晴らしい機材を持ったチームです。
搬入・搬出がとても楽なこの環境は、和楽器を扱う立場としても本当に羨ましくなるほどです 。
朝8時30分を過ぎる頃、会場には早くも子供のメンバーたちが元気よく集まってきました 。
私がスタジオに一歩足を踏み入れると、代表の高津喜道氏をはじめ、演奏リーダーの皆様が、笑顔と優しさで温かく迎え入れてくださいました 。
現在、周防千鳥太鼓保存会には、小学1年生から最高齢は60代までという、非常に幅広い年齢層のメンバーが27名在籍しています 。
内訳を聞くと、小学生が9名、中高生が9名、大人が9名と、各世代が実に見事なバランスで構成されているのです 。


練習開始の9時になると、全員で元気よくラジオ体操が始まりました!
その後は、バチを持った状態でしっかりと身体を動かす「エアー体操」での素振りへと移ります 。
まずは怪我のないよう、ゆっくりと時間をかけて身体をほぐしていく 。この基礎を重んじる姿勢に、チームの確かな歩みが見て取れます 。
この素晴らしいチームを支えているのがベテランの講師陣による強力な演奏指導体制です 。


これだけ頼もしい指導陣がスクラムを組んでいるからこそ、30年以上の長い歴史を紡いでこられたのだと深く得心しました 。
地域の太鼓チームをこれほど長きにわたり引っ張り、青少年を育成していくのは、並大抵の労力と苦労ではできません 。指導陣の皆様の並々ならぬ情熱、溢れるボランティア精神があって初めて成り立つ奇跡であり本当に頭が下がる思いです 。
また、練習開始前に指導陣の皆様が「桶胴太鼓のロープを張る作業」をされている姿にも私はとても嬉しくなりました 。

練習が終わったら必ずロープを緩めて皮の弾力を保ち、太鼓へ感謝と労りの念を抱く 。打楽器奏者として本来はごく当たり前のことですが、これが徹底できているチームは実はそれほど多くありません 。
道具を愛する心があるからこそ、素晴らしい音が育つのです 。
現在、チームは地元を中心としたお祭りやイベントへの出演をはじめ、福祉施設や教育機関へのボランティア活動なども積極的に行っており、まさに地域に根付き、地域に貢献している歴史ある太鼓グループです。
そして今回、皆様が私のために実際の演奏を披露してくださいました!
その演奏は、一言で言えば「圧巻の共存パフォーマンス」です。
確かに、細かな技術を見れば多少は荒削りのところもあるかもしれません。しかし、小学1年生の小さな身体から溢れるエネルギー、多感な中高生たちの真っ直ぐな響き、そしてチームを支えるシニア層の深みのある一打……それらが一つに融け合い、お互いを信頼し合って突き抜けてくる音の塊は、一つのチームとして最高、最上のパフォーマンスでした!
世代を超えた老若男女が一堂にそろって命の音を響かせている、この光景を目の当たりにして地元の和太鼓チームのあり方の原点を垣間見たような感動を覚えた。メンバーの中で三世代が一緒に演奏している姿を見てその美しさと素晴らしさに心の中から大きな拍手を送る自分がいた。
これぞ、いま日本の社会からなくなりつつある地元住民同士のつながりや結束であり、これこそが地域に伝わる和太鼓チームの大切な役目そのものです 。
本当に素晴らしい演奏をありがとうございました!
さて、この最高の演奏を聴かせていただいたからこそ、皆様がさらに次のステージへステップアップし、より「生きた楽しいリズム」を叩くための、私個人の視点からの愛のメッセージ(アドバイス)を少しだけお届けします 。
これだけの年齢差・体格差、そして素晴らしい楽器があるチームだからこそ、少しの工夫で見違えるほど演奏が変わります 。

①まずは「構えと姿勢、指示に合わせたバチの使い分け」の再確認です 。和太鼓はやはり立ち姿(姿勢)が命です 。子供たちの体格に合わせて、太鼓に向かう際の立ち位置や高さを少し工夫してあげるだけで、無駄な力が抜けて格段に叩きやすくなるはずです 。
②また、バチを握る際は「支点」をしっかりと意識してみてください 。力任せに叩きつけるのではなく、バチの重みを利用して「太鼓の胴全体を心地よく響かせる」感覚が掴めると、音の鳴りが驚くほど変わります 。特に小学校低学年の子供たちには、手の大きさに合わせて、バチの太さや長さ、そして何より材質(重さ)に注意して、体格に合った使い分けをしてあげると上達のスピードが劇的に上がります 。
③次に「アンサンブルの音量バランスと小節の意識」です 。長胴、平、桶胴、締太鼓のそれぞれの役割に応じた音量バランスや、音の高低差を意識してみましょう 。
モチーフとしての短いリズムの頭は何とか感じ取れているのですが、フレーズ全体の「小節の頭」がもう少しカチッと全員で感じられるようになると、演奏に一気に奥行きとドラマチックな楽しさが生まれます 。リズムの頭やシンコペーションによるアクセントの移動に注意して、お互いの音をより「聴く」練習を重ねれば、もっと跳ねるような生きたリズムが叩けるようになるはずです 。
④そして、全体のリズムを安定させるための最も重要な鍵が、指揮者の役目を果たす「締太鼓(やチャンチキ)の地打ち」の存在です 。
今回、全体のテンポが少しズレたり狂ったりする場面があったのですが、その最大の原因は演奏者の技術だけではなく、実は「締太鼓のロープの張り方」にあったようです。
ロープの締め具合のバランスが悪く、胴と皮の厚みがアンバランスになっていたため、本来の張りのある高い音が出ていなかったみたいです。
まずは締太鼓のセッティング(皮の張り方)をきれいに調整し、本来の抜ける音を取り戻せれば、メンバーの皆様が地打ちの音をしっかりと聞き、さらに打ち手の動作(モーション)を見ながら合わせられるようになると思いますので、全体の表現力は完璧に安定してくると思います。
そのため、アンサンブルを支える指揮者の音(地打ち)がメンバーの耳まで十分に届いていませんでした 。
周防千鳥太鼓保存会の皆様が持つ、あの温かい「人情の響き」と素晴らしい機材、そこにこれらの技術的なエッセンスが加われば、まさに鬼に金棒です。


これから夏に向けて、地域のイベントやお祭りで皆様の笑顔と力強い太鼓の音が響き渡り、阿知須の街を大いに盛り上げてくれることを、心から楽しみに、応援しております!
高津代表をはじめ、周防千鳥太鼓保存会の皆様、本当に最高の時間をありがとうございました!また元気な音を聴かせてくださいね!

【木谷の独り言】
怖いもの見たさもあって、クマに遭遇しないかな~?と半分期待、半分否定の道中でした(笑)。
西日本楽器社員一同、心から周防千鳥太鼓保存会の皆さんを応援致します。
ぶらり訪問記筆者:西日本楽器 和太鼓事業部 木谷慶一
040 周防千鳥太鼓保存会 2026年6月14日訪問
創立:1993年
拠点:山口市阿知須
分類:伝統文化系創作和太鼓チーム
団員数:現在27名
代表:高津喜道
チームの練習会場:阿知須地域交流センター
チームの練習日時:大人(中学生以上):木曜日19:00〜22:00、第2第4土曜日と翌日曜日11:00〜12:00/小学生:第2第4土曜日と翌日曜日9:00〜10:45
