ぶらり訪問記 No.027
訪問先:自由ヶ丘太鼓「一期一会」

今回のぶらり訪問記は、福岡県宗像市自由ヶ丘を拠点として幅広く活動をしている創作和太鼓チーム自由ヶ丘太鼓「一期一会」を訪問しました。

宗像市といえば福岡市と北九州市の両政令指定都市の中間に位置し、三方を山に囲まれ、玄界灘に大島、地島、沖ノ島、勝島を有し、市の中心部には、水源でもある釣川が流れ、玄界灘に注いでいる風光明媚な街である。

全国白砂青松100選、県森林浴100選でもある「さつき松原」の美しいクロマツ林は、市の代表的な景勝地で豊かな自然の象徴でもあり、更に宗像市は世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島としても、あまりにも有名な所である。

この宗像市を拠点に活動する自由ヶ丘太鼓「一期一会」の練習会場は多目的ホールや防音室などの設備が充実した自由ヶ丘コミュニティーセンターと言う公的施設の中で月に2回、土曜日の17時から21時までの4時間行われている。この施設の中には、太鼓の保管場所もあり、すぐに機材の出し入れができるため、練習時の太鼓の搬入・搬出はとても楽である。

このチームの創立は、2011年、今年で創立14年目というまだ若いチームではあるが現在、団員は27名、一番若いメンバーはなんと年長さん。年長さんから小学生そして中学・高校生までの幅広いジュニアを中心とした元気溌剌の若さ溢れるチームである。

現在、指導においては、河野純弥氏、そして奥様の仁美氏のご夫婦で行っており、さらに玄界高校邦楽部所属の娘さんがサブとして加わり、これ以上にない、申し分のない指導体制で行っている。なんとも頼もしい限りの指導陣である。

現在、地元を中心としたお祭りやイベント、施設や教育機関へのボランティア活動なども積極的に行っており、地域に根付き、地域に貢献している若き太鼓グループである。

このチームのモットーは「心をひとつに…」をテーマに、和太鼓を通して人と人とのつながりの大切さ、和太鼓の響きの素晴らしさを伝えていくことを目標に日々練習に励んでいますと語ってくれた。

~木谷の独り言~

練習会場につくと、もうすでに練習が始まっていた。年齢にかなりのばらつきがあり、一番下はなんと年長さん、一番上は経験豊かな高校生、まずはその年齢差に驚いた。

これだけ年齢差が広ければ一つの曲や練習曲を一緒に習得し表現していくことは、とてつもなく大変で難しいことであると真っ先に感じてしまった。

練習会場到着後、すぐに練習を見学させてもらった。

まずは基礎打ちから。基礎打ちにしっかり時間を取っている。

やはりみんなで行う基礎打ちこそが上達の道でもあり、また心を一つにするチームワークの源でもあり、そしてしっかりリズムを合わせるための根本であり基本中の基本であることを指導者がしっかりと体で習得させようとする意図がひしひしと伝わってきた。

四分音符、八分音符、16分音符、付点音符などの基本のリズムのフレーズをパターン化して小さな子供たちに飽きさせずに練習させようとする、「みんなで渡れば怖くない」的練習方法を取り入れた独自の基本練習法を作り上げている。

基本の重要さを常に理解させ、十分に基礎打ちの練習に時間をかけているところはさすがである。

しかし基本打ちといっても基本的音符はもちろんのこと、付点あり、3連符あり、更にアクセント移動のシンコペーションあり、これを連続して行っているということは大人でも結構難しいことである。

中高生のお兄ちゃん、お姉ちゃんは、いとも簡単にこなしているが、さすが入ったばかりの年長さんや小学生低学年にとったら至難の業である。

しかし練習をしばらく聴いていると年長さんや小学生低学年のメンバー達もしっかりとそれについて行っているではないか。

これは中高生が打つ、しっかりしたテンポキープされたリズムが地打ちの役目をしてくれるので、間違ってもいいからそれに乗っかって何とかついていこうと体で覚えようとする表れである。

このことについて私もふと思い出した。

私も今まで経験してきたことでもあり、また同じ自論を持っている。

音楽ほどファジーなものはない。

1が割れるはずがないのに3連符はきちんと割れている。ここが音楽の素晴らしさ。

この「ファジー」という言葉は、音楽における「あいまいさ」や「揺らぎ」、を表し音楽の表現や効果を高める重要な要素であり、これがコンピュータミュージックと人間が演奏したアナログ音楽との大きな違いである。

コンピュータミュージックみたいに合わなくていいのです。

全部合わなくてもいいから、せめてここだけ合わせてくれればいいのです。

そうすると心に響く音が奏でられるようになります。

だからこそ難しいリズムやテクニックばかりに走らないで、簡単なリズムでもいい、リズムが持つ自然体のしっかりした生きたリズムを打つことが大切であると。

向こうに1本の大きな木が見える。しかしよく見るとすこし枝ぶりが悪いところがある。

だからといって枝ぶりの悪いところを切ってしまうのではなく、少し離れて別の角度からよく見てやると、そこはトトロが住むような大きな大きな森の中の一本の木だった。

少々のことは少し目をつぶってやって、もっともっと音楽全体としての感性の表現も大切にしてあげてください。

細かいところばかりではなく大きな森としての素晴らしさも見てあげてください。

~昔このような指導者対象のセミナーを行ったことを思い出した~

このチームの指導者である河野純弥・仁美ご夫妻に会ってから、このチームの結成目的は音楽や太鼓テクニックの上達だけを目指すのではなく

和太鼓を通して、人としての心の豊かさ、そして感謝の気持ちや礼儀作法を身に着け、次世代を担うべく良き社会人に育ってほしいという願いを念頭において指導に当たっているのだという思いを強く感じた。

久々に将来を見据えた、いいチームに出会えた。いい若き指導者に出会えた。

このチームの今後ますますの発展と活躍を心より期待したい。

ぶらり訪問記 筆者:木谷慶一

<チームデータ>
自由ヶ丘太鼓「一期一会」
創立:2011年
拠点:宗像市自由ヶ丘
分類:創作和太鼓チーム
団員数:現在27名 
代表兼指導者:河野純弥・仁美

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