~世代を超えて打ち繋ぐ「伝統の原風景」と、歴史の街・筑紫野に響く熱き鼓動~

万葉の昔から太宰府の膝元として栄え、菅原道真公ゆかりの天山や歴史ある二日市温泉など、深い文化と豊かな自然が息づく街、福岡県筑紫野市。
この歴史情緒あふれる地に、53年という長きにわたり地域に根差し、伝統の響きを守り続けている和太鼓チームがあります。それが今回お邪魔した「つくし太鼓愛好会」の皆さんです。
このチームの創立は、なんと1973年(昭和48年)、今年で創立53年目を迎える、私設の和太鼓チームとしては非常に長い歴史のあるチームであり、福岡での和太鼓チームの先駆者的存在のチームでもあります。
このつくし太鼓愛好会は昭和48年に結成されて以来、今まで53年間年齢差を超えて一緒に太鼓を打つという姿勢は結成当時から全く変わっておらず会員は老若男女合わせて30名。
地域の祭りやイベント、施設訪問、学校のイベント、コンクールの出場や海外での交流等にも積極的に参加し、地域の活性化と青少年の育成活動を積極的に行い、子供たちからお年寄りまでの幅広い人々と交流を行っており、まさに地域を愛し、地域に根付き、地域に貢献する太鼓グループです。
夕暮れ時、取材のため指定の会場へ到着すると、会長の島村大道氏と奥様であり事務局長を務められる島村小百合氏ご夫妻が、温かい笑顔で迎え入れてくださいました。
普段は地元で長年愛される筑紫野市立筑山中学校の体育館を練習拠点とされていますが、この日は連日の酷暑によりメンバーの健康を第一に考え、急遽、冷房完備の下見公民館での臨時練習とのこと。
住宅街のど真ん中に位置する会場ですが、練習前には地区の区長さんが一軒一軒の近隣宅を回り、騒音へのお詫びと練習の許諾を得てくださったと伺いました。

地域住民の深い理解と温かい支えがあってこそ活動が成り立っていることに、冒頭から胸が熱くなります。
17時45分、保護者の皆様も総出でトラックからの楽器搬入とセッティングが始まりました。練習のたびに重い太鼓を運び出し、セッティングしてはまたしまうこの膨大な作業量だけでも並大抵の苦労ではありません。
18時05分、代表からご紹介いただき皆様へご挨拶を申し上げ、いよいよ近々のイベント出演に向けた熱気あふれる練習がスタートしました。
現在、チームの団員数は約30名。驚くべきはその世代の幅広さです。元気いっぱいの小学生から中高生、さらには最高齢となる70代の現役メンバーまで、老若男女が一堂に会しています。
親子で同じ太鼓を囲み、汗を流す姿も見られ、希薄化が叫ばれる現代社会において、世代を超えて一つの目標に向かい、地域社会の絆と伝統芸能を次世代へ引き継いでいくこの光景こそ、いま日本全体が必要としている「希望の原風景」そのものではないでしょうか。

長年にわたり年齢差の大きい大所帯チームを牽引し続けることは、並大抵の苦労ではありません。青少年の健全育成への並々ならぬ情熱と無償のボランティア精神がなければ決して続かない道です。
島村会長ご夫妻の尊い献身とリーダーシップには、ただただ深い敬意と頭が下がる思いがいたします。
そして演奏が始まって、私はさらなる感動を覚えました。現代の若手チームの多くがハイスピードで魅せる創作太鼓へ傾倒する中、つくし太鼓愛好会が大切に守り抜いているのは、筑豊の川筋太鼓の流れを組む伝統の「両面打ち」奏法でした。
小倉祇園太鼓や三宅太鼓、八丈太鼓など全国でも限られた地域に伝わるこの奏法は、元をたどれば京都の祇園太鼓に由来し、各地定着・独自進化を遂げてきた伝統技法です。
「カン」と「ドロ」、地打ちのリズムに乗せて勇壮なメロディを打つこの奏法は福岡各地に数多くある山笠にも受け継がれ進化してきた技法です。

この地打ちのリズムに合わせて打ち込む主旋律のリズム、打ち手の数だけ打ち方があると言われるぐらい多彩で勇壮な奏法を、チームでは「暴れ太鼓」と称して大切に育んでおられます。
この伝統の背骨をしっかりと持ちながら、現代的な創作曲も取り入れながらの柔軟な姿勢と運営。次世代を担う子どもたちが、伝統的な「本当の面白さ」を肌で感じて継承している姿は、実に頼もしく、誇らしいものでした。
テクニックの追求だけでなく、若者の人間形成をも見据えた確固たる運営体制があるからこそ、観客の心に深く届く素晴らしい演奏ができるのだと確信いたしました。
【木谷の独り言】~さらなる高みへ!もっと良くするための4つのヒント~
素晴らしい伝統と情熱を持つ、つくし太鼓愛好会だからこそ、あえてもうワンランク上の演奏を目指すためのアドバイスをいくつかお伝えしたいと思います。
ほんの少しの意識改革で、皆様の演奏は劇的に変化します!
①「今、誰が指揮者(主導権)なのか?」を意識しよう
演奏中、テンポが走ったりリズムがバラバラになったりする箇所が数多く見受けられました。
なぜなんだろう?
200人の大編成のオーケストラでも指揮者はたった一人です。
和太鼓にはタクトを持った指揮者がいませんが、フレーズごとに「今、誰が全体のリズム(指揮権)を握っているのか」「どのパートが主旋律なのか」を全員が耳と目(周辺視野)で共有する必要があります。
掛け声も、バチを振り上げる動作もすべて「指揮者からのシグナル」です。全員で同じ指揮者の動きに集中しましょう。
②「楽曲解釈」とパート間の会話(強弱の役割)を深めよう
今叩いているフレーズの主役(主旋律)は誰なのか、誰が脇役(副旋律・地打ち)なのかをチーム全体で解釈することが大切です。
例えば「今、主旋律は桶太鼓が目立つ場面だから、副旋律の長胴太鼓は少し音を抑えて支えよう」「よし、次のフレーズは我々長胴の出番だ、一気に主張しよう!」といった、音を通じた役割意識のバトンタッチ(会話)が聞こえてくると、曲に圧倒的な立体感が生まれます。
③「バチ選び」と持ち方の基本を再確認しよう
太鼓の音色はバチ選びで8割決まると言っても過言ではありません。
太鼓の種類はもちろん、打ち手の体格や力量、性別に応じた最適な長さ・太さ・材質のバチを選ぶことが上達への近道です。特に「長さ」には注意が必要です。
また、せっかくのバチの反動力を手元で殺してしまっている方も見受けられました。持ち手と支点の位置を今一度見直し、木の持つ自然な跳ね返りを最大限に活かしましょう。
④ 繊細で芯のある「pp(ピアニッシモ)」の表現力
どんな楽器でも、大音量(ff)を出すことより、極小音(pp)を美しく出すことの方が遥かに難易度が高いものです。
小さな音を出す際に、単に力を抜いてバチを「置きに行く」ような張りのない音になっていませんか?
「力は抜くが、打点にはしっかりと芯がある小さな音」を追求してみてください。
静寂の中に響く芯のあるppが表現できるようになると、曲全体のダイナミクス(抑揚)が劇的に高まり、観客を惹きつける圧巻の表現力が手に入ります。
島村会長ご夫妻の熱い想いと、それを慕って集まる30名の最高の仲間たち。
歴史ある筑紫野の地で、伝統の「暴れ打ち」の響きがこれからも10年、20年と次世代へ打ち繋がれていくことを確信しております。
つくし太鼓愛好会の皆様、素晴らしい演奏をありがとうございました!
西日本楽器は、これからも皆様の挑戦を全力で応援し続けてまいります!
ぶらり訪問記筆者:木谷慶一
つくし太鼓愛好会 2026年8月2日訪問
創立:1973年
拠点:筑紫野市
分類:伝統的創作系和太鼓チーム
団員数:現在30名
会長兼指導:島村大道
事務局長・運営指導:島村小百合
チームの練習会場:筑山中学校体育館
チームの練習日時:日曜日:18:00〜20:00
