直方山笠の練習会場訪問

6月14日(土曜日)に、7月に直方市で行われる山笠の練習風景を見学させて頂いた。

この直方山笠の歴史は古く、歴史をたどっていくと、平安時代に始まり江戸時代に直方藩主によって再興された多賀神社の御神幸に供奉(ぐぶ)したのが直方山笠の始まりだと言われ400年にもわたる非常に長い歴史があるとの説明を受けた。

供日(くんち、農村で行われる収穫を祝う祭り)として秋に行われる御神幸だが、近年は無病息災を祈る多賀神社の「夏越祭」と須賀神社の「祇園祭」に合わせ、山笠を奉納するようになってきたそうです。

※当時の写真

明治時代、炭鉱の集積地として栄えた当時は、なんと高さ17mを超える巨大で絢爛豪華な山笠をゆっくりと曳き、煌びやかさを誇っていたそうですが、その後電線の敷設に合わせ高さを4mと低くしたことから、絢爛さを出す工夫として観音開きが採用され、曳き山として勇壮さを競い合うようになり、現代の姿へと変化して行ったと考えられています。(※当時の写真参照)

直方山笠のような形態を持つ山笠は、そのまま「直方系」と呼ばれ、黒崎をはじめ福岡県北部に伝播して行き、各地域でアレンジを加えられながら、現代の姿へと発展して行ったと思われます。 そうした視点で、各地の山笠の共通点や違いを探してみるのも、地元のお祭りを楽しむ一つの手段かもしれません。

直方山笠は現在、古町北区、古町中区、多賀区、新町祇園山笠の4つがあり今日はその中の一つである古町中区山笠を訪問させて戴きました。

古町中区山笠は、江戸時代直方藩のころ商業の中心地であった古町商店街地区を拠点とする山笠で、法被の背中に『古中』の二文字が入ったものに統一され、参加者は地元古町・津田町地区から直方鞍手一円・北九州市からも多くの方が参加されているとのこと。

この古町中区山笠の太鼓の練習は5月連休明けから7月本番までの毎週土曜日17:00~19:00に直方商店街アーケード横の古町中区公民館前の敷地で行われている。

練習会場で公民館館長および宰判長の正木氏にお会いして、いろいろと今までの歴史や経緯等をお聞きした後、早速、練習を見学させて戴いた。

木谷の独り言

山笠の中には小さめの長胴太鼓が2台、大きめの長胴太鼓が1台、合計3台が組み込まれて演奏が行われ、山笠の中は狭いため座ったままでの演奏となり、バチもそれなりに短めの山笠に向いたバチを使用している。

リズムにおいては小倉祇園太鼓に例えるとカンとドロによく似ている。

ドロに当たる地打ちのリズム、タンタ、タンタ、タンタ、タンタを小太鼓が永遠にたたき続ける。いわゆる縁の下の力持ち的存在のパートである。

単純なリズムではあるがこのリズムをテンポキープしながら動く山笠の上の狭いところで叩き続けるのは至難の業である。しかし、なんと若き次世代の継承者である小学生が平気でこなしている。なんとも頼もしい限りである。

この地打ちのリズムをしっかり叩いてくれることによりカンのリズムである大太鼓の打ち手が自由に打ちまくり、踊り、そして力強いリズムを刻み、生きた和太鼓のリズムを演奏することができる。

一般的には小太鼓の単純な地打ちのリズムよりも大太鼓のリズムに目が、耳が行きがちであるが太鼓の良し悪しは地打ちのリズムで決まるといっても過言ではない。

また大太鼓のリズムを聞いていると結構難しいリズムをたたいている。

かなりシンコペーションのリズムが多く、裏拍にかなりのアクセントが移動しておりどちらかというと現代風のリズムであり、聞いているとジャズ的要素のある演奏である。八丈太鼓を思い出した。なかなか面白い。

大太鼓の打ち手に楽譜はあるのですか?とお尋ねすると楽譜はなく代々、口で、耳で、目で、体で覚えていくとのこと、日本の伝統文化継承の一つである口唱歌での伝承方法である。

古町中区山笠の役割は、直方山笠の伝統文化の継承・青少年の育成・直方町おこしの三つが大きな役割だとお聞きしたが、まさにその目的が見事に実証されており誠に素晴らしいことである。

私も若いころに、この直方商店街を幾度となく訪れたことがあったが、あの賑やかで活気にあふれた昔の面影は、残念ながら今はほとんど見られない。

しかしこの古町中区の山笠太鼓チームを見ていると、きっとこの若者たちが次世代にわたってこの伝統文化を継承し、そして昔の、あの活気ある直方を復活させてくれそうな気がしてきた。

このような各地域で大切に受け継がれている日本の文化は、日本の伝統芸能の素晴らしい形の一つであり、私たちとしても、こうした伝統文化を支え、次世代へと脈々と繋いでいくお手伝いをしなければならないと改めて強く感じながら練習会場を後にした。

ぶらり訪問記 筆者:木谷慶一

<追伸>

今年の「直方山笠2025」は7月の25日・26日そしてフィナーレが27日だそうです。

7月27日(日)は遠賀川のほとりに広がる自然豊かな直方リバーサイドパークで約6000発の花火が夜空を彩り、ナイアガラの滝のような壮大な仕掛け花火がフィナーレを飾るそうです。

また、昼間から楽しめる「まつりくらじ2025」や直方の伝統文化を感じられる「直方追山笠」も見逃せません。

古町北区、古町中区、多賀区、新町祇園山笠の4つの山笠が商店街や河川敷を走り抜ける姿をぜひ見たいものです。

また、4チームの山笠の太鼓競演会やガブリ競演会も見逃せないと思います。

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